過食嘔吐の治し方ー過食症(神経性過食症)の診断と治療

はじめに

過食したい気持ちが強くなってくると、その気持ちを抑える事が出来ず、過食し、その後嘔吐することを繰り返してしまっている方はいないでしょうか?このような過食嘔吐を繰り返している方の中には、過食症(正式には神経性過食症)の方がいらっしゃるかもしれません。この記事では、過食症の診断と治し方について、最新の情報を提供したいと思います。

過食症とは

過食症の方は、過食したいと言う衝動があり、過食を繰り返すだけでなく、過食後の体重増加を防ぐため、自発的嘔吐や下剤の使用、過度な運動などの行動が認められます。過食症や拒食症(正式には神経性やせ症と言います)のように、心理的背景を有し、極端な過食や節食として現れる食行動の障害を、摂食障害と言います。摂食障害では、ストレスを適切に処理することが困難で、そのことが発症に関与していると考えられています。

過食症は、思春期から青年期の、主に女性に発症し、若年女性の2〜3%の方に認められます。食事を摂る事を制限する神経性やせ症として発症し、経過中に過食が出現して過食症になることが多いとされています。

神経性過食症の経過としては、5-10年の追跡期間において、50%が回復、30%が再発、20%がなお治療中との報告があります。

過食症の診断

以下に、代表的な精神疾患の分類として世界的に使用されている、精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders Fifth Edition, DSM-5)に掲載されている神経性過食症の診断基準を平易な言葉でご紹介したいと思います。

A. 反復する過食。それは、以下の両方の特徴を持つ。

  • 他とはっきり区別される時間帯に、殆どの人よりも明らかに多い食物を食べる。
  • その間は、食べる事を抑制出来ないと言う感覚がある。

B. 体重の増加を防ぐための反復する不適切な代償行動。例えば自己誘発性嘔吐、下剤、利尿薬、その他の医薬品の乱用、絶食、過剰な運動など。

C. 過食と不適切な代償行動が共に少なくとも週1回、3ヶ月間は続いている。

D. 自己評価が体型及び体重の影響を過度に受けている。

E. その症状は、神経性やせ症の期間のみに起こるものではない。

以上、A〜Eを満たせば、神経性過食症の可能性が有ります。

過食の際には、大量の食べ物を一定時間に一気に摂取します。一旦食べ出すと、頭の中が真っ白になる感覚を伴います。

身体症状として、う歯、耳下腺の腫れ、低カリウム血症などが見られます。体重は標準的ですが、変動が激しい傾向があります。

精神症状として、しばしば抑うつ気分が認められます。また、不安定な対人関係、著しい気分変動、イライラや焦り、解離症状、リストカットや過量服薬などの自己破壊的行動などを伴うこともあり、境界性パーソナリティ障害の併発と考えられる場合もあります。

過食症の治し方

薬物療法や認知行動療法など様々な精神療法が行われます。

治療上、以下は再確認して頂きたい点です。

  • 3食食べても体重が増え続けることはないということ。
  • 過食後の絶食が更なる過食を引き起こすこと。
  • 適切な体重を超えて無理に痩せようとすると反動的な過食が出現しやすいこと。
  • 過食嘔吐には、一時的にはストレス発散の効果があり、嘔吐は終了時に快感を伴うため習慣性があり、急に過食嘔吐を止めることは簡単ではないので、嘔吐を徐々にやめて行くようにすること。

薬物療法

現在のところ、過食症の適応を取得した内服薬は有りませんので、薬物療法は適応外使用となります。フルボキサミンやパロキセチンなどの抗うつ薬により過食や嘔吐の頻度を減少させることが期待できます。抑うつ気分やイライラや焦りが強く、自分を傷つけるような行動が見られる場合は、抗精神病薬のリスペリドンが使用されることが有ります。

認知行動療法

専門家の指導のもと、毎日の日中の活動、食事の内容、過食前の状況、気分、考えた事などを記録してもらい、過食のきっかけとなる出来事や気分を探ります。

少しでも食べたらとても体重が増えてしまうと思っている時は、計画的に食事量を増やし、どの程度体重が増えたか検討することで、極端な考え方の修正を図ります。

過食したくなった時に行うことで過食を遅らせることが出来る行動のリストを作成しておき、過食したくなったら、そのリストの行動を順番に行って頂きます。

過食後に嘔吐するまでの時間を少しずつ伸ばして行くことで、嘔吐を徐々に止めて行きます。

まとめ

過食嘔吐のように、過食と共に嘔吐などその後の体重増加を抑える行動が繰り返されている場合、過食症の可能性があります。過食症においては、自己評価が体型及び体重の影響を過度に受ける特徴があります。過食嘔吐の治し方としては、薬物療法や認知行動療法などがあります。

参考文献

  • 樋口輝彦, 市川宏伸, 神庭重信, 朝田隆, 中込和幸. (2016). 今日の精神疾患治療指針. 第2版. 医学書院.
  • 高橋三郎. 大野裕他. (2014). DSM-5 精神疾患の診断と分類の手引き. 医学書院.

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