はじめに
この記事を読んで頂いている方は、ご家族が統合失調症だと告げられ、統合失調症とはどのような病気なのか心配していらっしゃるのではないでしょうか。またはご家族がもしかすると統合失調症なのではないかと不安に感じている方がいらっしゃるかもしれません。そのような方のために、この記事では統合失調症の主な症状についてご紹介したいと思います。病気について正しい知識を得ることは回復のために重要です。
統合失調症の症状について
統合失調症では様々な症状が認められ、以下のように整理できます。
陽性症状群:幻覚、妄想、自我障害、まとまりの無い思考など。
陰性症状群:感情鈍麻、意欲低下など。
感情症状群:不安、緊張、抑うつ、など。
認知機能症状群:記憶障害など。
幻覚
幻覚は正常な知覚と同等の強さで体験され、意志によって制御出来ません。幻覚は、どのような感覚にも生じますが(聴覚の場合は幻聴であり、視覚の場合は幻視)、統合失調症では幻聴が最も多いとされています。
幻聴は通常、声として体験され、聞き慣れた声も聞き慣れない声もありますが、その人の思考とは別なものとして体験されます。
自分のことを3人称でうわさをしている1人または複数の声がきこえることもあり、会話形式(言い合う形)の幻声と呼ばれます。
自分の行為と共に発言する幻声もあります。「彼、今トイレに入ったよ」など。
自分の考えが声になって聞こえるということもあり、考想化声と呼ばれます。
妄想
妄想とは、相反する証拠があっても変わることがない考えのことで、その内容は多様です。
被害妄想:ある人や団体などから危害を加えられる、嫌がらせをされる、などの考え。
関係妄想:ちょっとした仕草や言葉や身の回りの些細なことなどが自分に向けられているという考え。「家の前を人が笑いながら歩いていったのは、自分を馬鹿にしているのだ」など。
誇大妄想:自分が特別な能力や財産などを持っているという考え。世界は自分を中心に動いているという考えや、自分は世界を支配出来るという自己万能感もあります。自分は救世主であるという宗教的なものもあります。
被愛妄想:ある人が自分に恋愛感情を抱いているという考え。
自我障害
自分は自分であるという感覚が薄れ、自分と外界との境界が不鮮明であるように感じられます。自分で考え行動しているという、自我の能動性の意識が薄れます。
構想察知:自分が頭の中で考えていることが相手にわかってしまうと感じられます。
構想伝播:自分の考えが周囲に漏れ伝わっているように感じます。
させられ体験:自分が考えているのではなく考えさせられるように感じ、操り人形のように他人の意志のままに行動させられると感じます。
まとまりの無い思考
まとまりの無い思考は、その人の会話から推測されます。
連合弛緩:ある話題から別の話題にそれることがあり、話の文脈のまとまりがなくなります。
滅裂思考:発語がひどくまとまりがなくなり、殆ど理解不能となります。
陰性症状
本来有るべきものが無くなる症状を陰性症状と言います。以下の二つが顕著です。
感情鈍麻:外界からの刺激に対して自然な感情反応が起こらない状態です。喜怒哀楽の感情に乏しくなり、外界の出来事だけでなく、自分の肉体の状態にも無関心になってきます。
意欲低下:能動性や自発性の低下が起こります。積極的に仕事や勉強をしようとしなくなり、家では朝寝坊をして、一日中怠惰な生活を送り、退屈を感じません(無為)。身だしなみもだらしなくなり、動作も不活発になり、食べては寝るという生活になります。
不安、緊張、抑うつ
不安や抑うつ気分も頻度の高い症状です。希望の喪失や深刻な劣等感を抱いていることが少なくないと言われています。
また、治療などにより統合失調症の症状が概ね軽快した後に抑うつ状態が目立つことが少なくありません。このような状態を、統合失調症後抑うつと言います。
認知機能障害
近年、統合失調症において認知機能障害、特に記憶の障害や実行機能障害が認められると言われています。障害の程度は、長期に渡り安定していることが多いと言われています。
まとめ
統合失調症では様々な症状が認められ、陽性症状群(幻覚、妄想、自我障害、まとまりの無い思考)、陰性症状群(感情鈍麻、意欲低下)、感情症状群(不安、抑うつ)、認知機能症状群(記憶障害)などがあります。
参考文献
- 高橋三郎. 大野裕他. (2014). DSM-5 精神疾患の診断と分類の手引き. 医学書院.
- 大熊輝雄. (2013). 現代臨床精神医学改訂第12版. 金原出版.
- 倉知正佳. (2016). 統合失調症の理解. 医学書院.
- 樋口輝彦, 市川宏伸, 神庭重信, 朝田隆, 中込和幸. (2016). 今日の精神疾患治療指針第2版. 医学書院.
コメント