身体症状症(身体表現性障害)の診断基準について

はじめに

ご自分が、あるいはご家族やご友人が、身体症状症だと言われ、身体症状症とはどのような病気だろうと思っていらっしゃいませんか。どのような場合に身体症状症と診断されるのだろうと思っていらっしゃいませんか。この記事では、身体症状症の診断基準についてご紹介したいと思います。病気について正しい知識を得ることは回復のために重要です。

身体症状症とは

身体症状症とは、苦痛を伴う身体症状が持続し、その症状に対する反応としての過剰な思考、感情、または行動が引き起こされている状態です。

以前には身体化障害或いは身体表現性障害とも呼ばれていました。女性に多く、成人早期に発症し、慢性の経過を辿ることが多いと言われています。

身体症状症の原因は不明ですが、心理社会的要因や生物学的要因が提唱されています。身体症状症は、何らかのストレス要因にさらされることにより、出現したり、増悪したりすることが多いと言われています。

身体症状症では、高率にうつ病不安症パーソナリティ障害が併存すると言われています。

身体症状症の診断基準

世界的に精神疾患の診断に使われている、精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders Fifth Edition, DSM-5)に掲載されている身体症状症の診断基準は、以下の通りです。

身体症状症の診断基準(DSM-5)
A.1つまたはそれ以上の,苦痛を伴う,または日常生活に意味のある混乱を引き起こす身体症状.
B. 身体症状,またはそれに伴う健康への懸念に関連した過度な思考、感情、または行動で、以下のうち少なくとも1つによって顕在化する.
(1)自分の症状の深刻さについての不釣り合いかつ持続する思考
(2)健康または症状についての持続する強い不安
(3)これらの症状または健康への懸念に費やされる過度の時間と労力
C. 身体症状はどれひとつとして持続的に存在していないかもしれないが、症状のある状態は持続している(典型的には6カ月以上).
A〜Cが当てはまる場合、身体症状症の可能性があります。

以前の診断基準では、医学的に説明不能な症状があることの重要性が過度に強調されていました。DSM-5では、身体化障害の診断基準に含まれていた、身体症状を説明可能な器質的疾患の存在が見当たらない、という基準が削除されています。

身体症状症の特徴は、身体症状それ自体ではなく、身体症状がどのように現れ、どのように解釈されているかにあります。

  • 自分の身体症状をひどく心配し、症状がひどく恐ろしいもので、有害で、または厄介なものだと考えます。しばしば自らの健康状態について最悪のことを考えます。健康への懸念が生活の中心事となることがあります。
  • 医師に過度な検査や治療を依頼し、必要以上の再保証や安心を求め続ける行動が見られます。インターネットで身体症状について調べ続け、安心を得ようとする行動が見られます。しばしば高水準の医学的ケアを利用しますが、それによって心配が和らげられない場合、同じ症状について様々な医師の治療を探し求めることもあります。

身体症状症ではどのような身体症状も出現しますが、多いものは、

  • 痛み(頭痛、腹痛、月経痛など)
  • 吐き気や嘔吐などの消化器系の症状
  • 月経や性にまつわる痛みなどの症状(月経困難症など)
  • かゆみ、しびれなど皮膚症状、などです。

身体症状症では、このような身体症状が、繰り返し出現することが特徴です。また、症状は、変化したり、移動したりします。

身体症状症の治療

身体症状症の治療には、未だ確立されたものはありませんが、認知行動療法をはじめ精神療法・心理療法及び薬物療法も行われています。

薬物療法としては、『今日の精神疾患治療指針第2版』では、一例ですが、抑うつ状態や不安障害が併存している場合は1.を、不安が強い場合は2.を用いるとされています。

  1. セルトラリン(製品例ジェイゾロフト25mg) 1-4錠 分1(1日1回夕食後)
  2. ワイパックス錠(製品例ソラナックス、コンスタン0.5mg) 1錠 頓用(必要時、ということ)

まとめ

身体症状症とは、苦痛を伴う身体症状が持続し、その症状に対する反応としての過剰な思考、感情、または行動が引き起こされている状態です。自分の身体症状をひどく心配し、症状がひどく恐ろしいもので、有害で、または厄介なものだと考えます。しばしば自らの健康状態について最悪のことを考えます。健康への懸念が生活の中心になることもあります。医師に身体症状のことを繰り返し尋ねたり、検査や治療を要望したり、自らインターネットで身体症状のことを調べ続けたりして、必要以上の再保証や安心を求め続ける行動が見られます。身体症状症に対して、認知行動療法をはじめ精神療法・心理療法及び薬物療法などが行われています。

参考文献

  • 高橋三郎. 大野裕他. (2014). DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル. 医学書院.
  • 樋口輝彦, 市川宏伸, 神庭重信, 朝田隆, 中込和幸. (2016). 今日の精神疾患治療指針第2版. 医学書院.
  • 清水栄司. (2020). 身体症状症の認知行動療法. 精神医学, 62, 1623-1632.

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