はじめに
長期間うつ症状が治らずお悩みの方の中には、飲酒を止めたいと思っているが止められないという方がいるのではないでしょうか。そのような方の中には、うつ病とアルコール使用障害が併発している方が含まれているかもしれません。その様な方々のために、ここではうつ病にしばしば併発する病気であるアルコール使用障害についてご紹介したいと思います。この記事を読む事で、アルコール使用障害の特徴とうつ病との関係を知る事が出来ます。うつ病に併発する病気について正しい知識を得ることは、うつ病の回復のために重要です。
アルコール使用障害とは
代表的な精神疾患の分類として世界的に使用されている、精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders Fourth Edition, DSM-IV)では、アルコール乱用とアルコール依存症とに分けられていた概念が、最新版のDSM-5ではアルコール使用障害としてまとめられています。以下にDSM-5に掲載されているアルコール使用障害の診断基準について、ご紹介したいと思います。
アルコール使用障害の診断基準
アルコールを飲むことに関連して生じた障害のことであり、以下のうち少なくとも2つが、12ヶ月以内に起こっていれば、アルコール使用障害の可能性があります。
(1)アルコールをつい大量に飲みすぎたり、長期間飲み続けてしまう。
(2)アルコールの量を常に減らしたいと思っているが、減らすことができない。
(3)アルコールにまつわる行動(入手、飲酒、お酒を覚ますなど)に多くの時間を費やしている。
(4)強い飲酒欲求または衝動がある。
(5)アルコールの影響で、職場、学校、または家庭における重要な役割の責任を果たす事が出来なくなる。
(6)アルコールがもとで、度々社会的、対人的問題が起こり、悪化しているにも関わらず、アルコールを飲み続けている。
(7)アルコールのために、重要な社会的、職業的、または娯楽的活動を諦めたり、我慢したりしている。
(8)身体に影響が出ているにも関わらず、アルコールを飲み続けている。
(9)アルコールによって身体的または精神的問題が悪化していると気付いていてもアルコールを飲み続けている。
(10)耐性が生じている、以下のいずれかが認められる。
(a)中毒になる程酔うのに必要なアルコール量が著しく増えている。
(b)同じ量のアルコールを飲み続けても酔わない。
(11)離脱、以下のいずれかが認められる。
(a)アルコール離脱症候群が認められる。
(b)離脱症状を和らげるために、アルコール(またはベンゾジアゼピンの様な密接に関連した物質)を飲む。
アルコール使用障害とうつ病
アルコール使用障害は、 気分障害の抑うつ状態の約16%、躁、軽躁状態の約24%が併存を示したという研究が有ります。従って、うつ病及び躁うつ病の治療においては、アルコール使用障害の併存が無いか、検討することが望ましいと考えられます。もしうつ病とアルコール使用障害が併存しているのであれば、うつ病とアルコール使用障害を同時に治療していくことが必要だと考えられます。
まとめ
アルコール使用障害は、アルコールを飲むことに関連して生じた障害のことであり、アルコール乱用及びアルコール依存症を含む概念で、抑うつ状態とも、躁、軽躁状態ともかなりの頻度で併存することが報告されています。うつ病とアルコール使用障害が併存しているのであれば、両方の疾患を同時に治療していくことが必要だと考えられます。
参考文献
- 高橋三郎. 大野裕他. (2014). DSM-5 精神疾患の診断と分類の手引き. 医学書院.
- うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害. (2016). 日本うつ病学会治療ガイドライン II.
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