不眠症(不眠障害)とは

はじめに

ベッドに入ってもなかなか寝付けなかったり、朝起きるまでに何度も目が覚めてしまったり、睡眠が上手く取れないことでお悩みではないでしょうか。また、アラームをセットした時間より何時間も前に目が覚めてしまい、長時間眠れずお悩みではないでしょうか。この様な状態は様々な精神的な不調において出現しますが、もしかすると不眠症(不眠障害)かもしれません。この記事では、どのような状態を不眠症と呼ぶのか、ご紹介したいと思います。病気について正しい知識を得ることは回復のために重要です。

不眠症(不眠障害)について

不眠症とは、適切な環境で眠ろうとしても寝付けなかったり、途中で目が覚めたり、目が覚めるのが早すぎたりして、睡眠が十分とれず、日中の活動に影響が出ている状態です。

日本人の30%以上が不眠の症状を経験しており、凡そ10%に不眠障害が認められ、高齢者や女性に多いと言われています。

ストレスのある出来事、環境変化、睡眠スケジュールの変化などにより生じた不眠は、数日から数週間で、状況が改善すれば消失します。しかし、心理的な脆弱性(なりやすさ)を持つ人は状況が改善した後も不眠が持続したり、ちょっとしたことで不眠が再発することがあります。

不眠になる主要なメカニズムとして以下のものが考えられています。

  • たまたま不眠となったことをきっかけに不眠に対する不安や恐怖感が生じて、夜になると眠ろうと努力してかえって目が冴えて、不眠となってしまう。元来、几帳面で神経質な性格の人に多いと言われています。
  • 子供の頃から寝付きが悪く、しばしば幼児期から症状が見られ、遺伝的体質が関与すると考えられています。
  • 睡眠状態誤認とも呼ばれ、客観的には寝ているのに自覚的には全く眠れていないと感じ、日中の疲労感、作業能率低下、うつ状態などが見られます。

不眠症(不眠障害)の診断について

不眠症(不眠障害)の診断基準をご紹介します。代表的な精神疾患の分類として世界的に使用されている、精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders Fifth Edition, DSM-5)では、以下のような状態を不眠症(不眠障害)と呼びます(平易な言葉に置き換えてあります)。

不眠症(不眠障害)の診断基準(DSM-5)
A. 睡眠の量または質の不満に関する顕著な訴えが、以下の症状のうち1つ(またはそれ以上)を伴っている。
(1) 入眠困難(子どもの場合、世話する人がいないと入眠できないことで明らかになるかもしれない)
(2) 頻回の覚醒、または覚醒後に再入眠できないことによって特徴づけられる、睡眠維持困難(子どもの場合、世話する人がいないと再入眠できないことで明らかになるかもしれない)
(3) 早朝覚醒があり、再入眠できない
B. その睡眠の障害は、臨床的に意味のある苦痛、または何らかの生活上の機能の障害を引き起こしている。
C. その睡眠困難は、少なくとも1週間に3夜で起こる。
D. その睡眠困難は、少なくとも3カ月間持続する。
E. その睡眠困難は、睡眠の適切な機会があるにもかかわらず起こる。
F. その不眠は、他の睡眠-覚醒障害(例:ナルコレプシー、呼吸関連睡眠障害、概日リズム睡眠-覚醒障害、睡眠時随伴症)では十分に説明されず、またはその経過中にのみ起こるものではない。
G. その不眠は、物質(例: 乱用薬物、医薬品)の作用によるものではない。
H. 併存する精神疾患および医学的疾患では、顕著な不眠の訴えを十分に説明できない。
A〜Hが当てはまる時、不眠症(不眠障害)の可能性があります。

不眠症(不眠障害)の症状について

夜間睡眠の障害がある人の全てが苦しんだり機能障害を持つとは限りません。例えば、睡眠の持続性は健常高齢者ではしばしば妨げられていますが、それにもかかわらず、自身ではよく眠れると言います。したがって、不眠症の診断は、夜間睡眠の困難に伴って、意味のある日中の苦痛または障害がある人に限って下されるべきものです。

不眠症による日中の機能障害には、疲労感、注意集中困難、作業効率低下、気分不快、眠気、多動、気力低下、間違いの増加、夜間睡眠へのこだわり、などが見られます。

診断に必要とされる不眠の頻度および期間とは別に、不眠症状の基準は、下記の通りです。

  • 入眠困難:寝付くまでに20~30分以上かかる場合。
  • 睡眠維持困難:入眠後 20~30分以上の覚醒時間がある場合。
  • 早朝覚醒:標準的な定義は有りませんが、予定時刻よりも少なくとも30分前で、全睡眠時間が6.5時間に達する前に覚醒する場合。

不眠症状は、うつ病など他の精神疾患の一症状として現れることもありますので、他の精神疾患の併発によるものではないか、検討する必要があります。

まとめ

不眠症(不眠障害)は、適切な環境で眠ろうとしても寝付けなかったり、途中で目が覚めたり、目が覚めるのが早すぎたりして、睡眠が十分とれず、日中の活動に影響が出ている状態です。不眠による日中活動への影響としては、疲労感、注意集中困難、作業効率低下、気分不快、眠気、多動、気力低下、間違いの増加、夜間睡眠へのこだわり、などが見られます。不眠症状は、うつ病など他の精神疾患の一症状として現れることもありますので、他の精神疾患の併発による不眠ではない場合、不眠症と診断されます。

参考文献

  • 高橋三郎. 大野裕他. (2014). DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル. 医学書院.
  • 樋口輝彦, 市川宏伸, 神庭重信, 朝田隆, 中込和幸. (2016). 今日の精神疾患治療指針第2版. 医学書院.
  • 田中克俊. (2020). 睡眠衛生指導. 日本臨床; 78, 215-220.

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