レビー小体型認知症の症状について

はじめに

この記事を読んで頂いている方は、ご家族がレビー小体型認知症だと告げられ、レビー小体型認知症とはどのような病気なのか心配していらっしゃるのではないでしょうか。またはご家族がもしかするとレビー小体型認知症なのではないかと不安に感じている方がいらっしゃるかもしれません。そのような方のために、この記事ではレビー小体型認知症の主な症状についてご紹介したいと思います。病気について正しい知識を得ることは回復のために重要です。

レビー小体型認知症とは

レビー小体型認知症は4つの主要な認知症の一つで、高齢者の認知症の十数〜二十数%を占め、高齢認知症者の5〜6人に1人がレビー小体型認知症だと言われています。

α-シヌクレインという蛋白から成るレビー小体が、中枢神経系・自律神経系に広範に出現し、神経細胞の脱落が起こり、認知症やパーキンソン症状が起こる病気です。

レビー小体型認知症では、認知機能障害、幻覚・妄想・うつ・睡眠障害など精神症状、パーキンソン症状、便秘や起立性低血圧など自律神経症状など、症状が多彩です。

レビー小体型認知症の症状について

記憶障害に比べ、注意障害、視空間認知障害が目立つ:レビー小体型認知症の認知機能障害の特徴は、記憶障害が比較的軽い一方、注意障害、視空間認知障害(目で見た物の形や位置を認知する能力)、実行機能障害が早期から目立ちます。視空間認知障害のため、道に迷ったり、服の前後を間違ったりします。注意力の低下も顕著で、ぼんやりとして反応が鈍く、会話をしていても一貫性が無く、すぐに別の話にそれてしまったりします。明らかな誘因が無く注意力を中心とした認知機能が変化することも特徴的で、しっかりしている時とぼんやりしている時が見られます。

幻覚・妄想:人や小動物の、形があって具体的な幻視を繰り返します。また、被害・罪業・嫉妬妄想などがしばしば認められます。

パーキンソン症状:寡動、静止時振戦、筋強剛のいずれか一つ以上。レビー小体型認知症の80%にはパーキンソン症状を伴っていると言われていますが、軽度なことも多く、初期には認められないこともあります。

レム睡眠行動障害:レビー小体型認知症やパーキンソン病の発症の10年以上前に既に出現することがあり、非常に早期の兆候となります。正常時にはレム睡眠の際には、筋緊張の低下が起こりますが、レム睡眠行動障害においては、このような筋緊張の低下が起こらず、大声で寝言を話したり、睡眠中に手足の激しい動きとして認められます。

うつ症状:レビー小体型認知症に効率に合併します。老年期のうつは、レビー小体型認知症の前駆症状であることも多いと報告されています。

睡眠障害:レビー小体型認知症において、アルツハイマー病よりも効率に合併します。不眠、睡眠の質の不良、日中の眠気が高率に認められます。

自律神経障害:心臓、腸管、膀胱などを支配する自律神経系にもレビー小体が認められ、頻尿、尿失禁、便秘、起立性低血圧、発汗障害などの様々な自律神経障害が引き起こされる。

抗精神病薬への過敏性:重篤な抗精神病薬への過敏性があり、幻視や妄想などの精神症状に対して定型抗精神病薬の使用は避けるべきであると言われています。

レビー小体型認知症の診断基準について

レビー小体型認知症の診断基準をご紹介します。代表的な精神疾患の分類として世界的に使用されている、精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders Fifth Edition, DSM-5)では、以下のような状態をレビー小体型認知症と呼びます(平易な言葉に置き換えてあります)。

レビー小体型認知症の診断基準(DSM-5)
A.認知症の基準を満たす
B.その障害は潜行性に発症し緩徐に進行する
C.その障害は確実なまたは疑いのあるレビー小体を伴う神経認知障害の中核的特徴および示唆的特徴の両方を満たす
確実なレビー小体を伴う認知症では、2つの中核的特徴、または1つ以上の中核的特徴と1つの示唆的特徴をもつ
疑いのあるレビー小体例を伴う認知症では、1つだけの中核的特徴、または 1つ以上の示唆的特徴をもつ
1)中核的な診断的特徴
(a)認知の動揺性とともに著しく変動する注意および覚醒度
(b)詳細で繰り返し出現する幻視
(c)認知機能低下の進展に続いて起こる自然発生的なパーキンソン症状
2)示唆的な診断的特徴
(a)レム睡眠行動障害
(b)神経遮断薬に対する重篤な過敏性
D.その障害は、脳血管疾患、他の神経変性疾患、物質の作用、または他の精神疾患、神経疾患、全身性疾患ではうまく説明されない
以上A〜Dを満たすとき、レビー小体型認知症の可能性があります。

まとめ

レビー小体型認知症は4つの主要な認知症の一つで、高齢者の認知症の十数〜二十数%を占め、高齢認知症者の5〜6人に1人がレビー小体型認知症だと言われています。α-シヌクレインという蛋白から成るレビー小体が、中枢神経系・自律神経系に広範に出現し、神経細胞の脱落が起こり、認知症やパーキンソン症状が起こる病気です。レビー小体型認知症では、認知機能障害、幻覚・妄想・うつ・睡眠障害など精神症状、パーキンソン症状、便秘や起立性低血圧など自律神経症状など、症状が多彩です。

参考文献

  • 高橋三郎. 大野裕他. (2014). DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル. 医学書院.
  • 樋口輝彦, 市川宏伸, 神庭重信, 朝田隆, 中込和幸. (2016). 今日の精神疾患治療指針第2版. 医学書院.
  • 森悦朗. (2019). レビー小体型認知症の病態と診断. 日本医事新報, 4961: 18-22.
  • 橋本衛. (2019). レビー小体型認知症の特徴的症状と薬物療法. 日本医事新報, 4961: 24-29.

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