血管性認知症の症状について

はじめに

この記事を読んで頂いている方の中には、ご家族が血管性認知症だと言われ、不安に感じている方がいらっしゃるかもしれません。そのような方のために、血管性認知症の主な症状についてご紹介したいと思います。病気について正しい知識を得ることは回復のために重要です。

血管性認知症とは

血管性認知症(Vascular Dementia, VaD)は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など様々な脳血管障害を基盤とする認知症の総称です。VaDは、アルツハイマー病に次いで神経認知障害の2番目に多い原因であり、認知症全体の約20%を占めると報告されています。

血管性認知症の診断について

血管性認知症の診断基準をご紹介します。世界的によく用いられる診断基準であるNINDS-AIRENでは、以下のような状態を血管性認知症と呼びます(平易な文章に修正しています)。

血管性認知症の診断基準(NINDS-AIREN)
A. 認知症がある。
B. 病歴、症候、画像診断から、脳血管障害がある。
C. AとBの間に時間的因果関係がある(脳卒中発症後、3ヶ月以内に認知症が起こっている)。
D. その症状は、他の脳疾患や全身性疾患ではうまく説明されない。
以上のA〜Dが当てはまる時、血管性認知症の可能性があります。

血管性認知症の症状について

血管性認知症の基盤となる脳血管障害によって、症状や経過は多様です。脳血管障害が生じる部位によって、神経症候や認知機能障害の症状が影響され、損傷を受けた部位と損傷を免れた部位が出現し、まだらの認知機能の脱落症状を呈するため、まだら認知症と呼ばれます。認知機能障害として、複雑性注意障害(注意散漫)、思考緩慢、実行機能障害、失語(言いたい言葉が浮かんでこないなど言語機能の障害)、失行(運動麻痺は無いが、思うように動作が出来ない)、失認(対象を感覚出来ているが、正しく認識出来ない)などが見られます。

神経症候として、片麻痺(半身の運動麻痺)、偽性球麻痺(構音と嚥下が障害される)、四肢の筋力低下、小刻み歩行、過活動性膀胱(急にまた頻繁に尿意を感じる)などが見られます。

精神症状として、抑うつ、不安、意欲・自発性低下、せん妄、興奮、感情失禁などを伴うことが多いと言われています。

経過として、脳卒中発症後に認知症を呈する脳卒中後認知症や、脳卒中発作を起こす毎に階段状に症状が進行する場合もあります。明らかな脳卒中を伴わず、徐々にゆっくり進行する場合もあります。

まとめ

血管性認知症は、様々な脳血管障害を基盤とする認知症の総称で、アルツハイマー病に次いで、2番目に多い認知症の原因であり、認知症全体の約20%を占めると報告されています。血管性認知症の基盤となる脳血管障害によって、症状や経過は多様です。運動麻痺など神経症候や、注意散漫、思考緩慢、実行機能障害など認知機能障害や、抑うつ、意欲・自発性低下など精神症状が見られます。脳卒中発症後に認知症を呈する脳卒中後認知症や、脳卒中発作を起こす毎に階段状に症状が進行する特徴があります。

参考文献

  • 高橋三郎. 大野裕他. (2014). DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル. 医学書院.
  • 樋口輝彦, 市川宏伸, 神庭重信, 朝田隆, 中込和幸. (2016). 今日の精神疾患治療指針. 第2版. 医学書院.

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